ローカルハッピネスNo.04
・女は男よりしあわせ?
・47都道府県別 女のしあわせランキング
・女の人生としあわせ/産むしあわせ、働くしあわせ
・女性は地域に何を求めているのか?
女は男よりしあわせ?
幸福論の研究の世界では、女性の幸福度が男性の幸福度を上回ることは常識のようです。博報堂生活総合研究所が2年に1度実施している生活定点調査で「あなたは、自分のことをどの程度幸せだと思っていますか?」という質問に対して「非常に幸せな方だと思う」「まあ幸せな方だと思う」と答えた人の割合も男性72.1%、女性79.5%と女性が男性を上回ります(2012年調べ)。この傾向は20年前から変わりません。
しあわせ風土調査でも、風スコア、土スコア、総合スコアともに女性が男性を上回ります。5つの指標をみてみると、「やってみよう」「なんとかなる」「あなたらしく」の3指標では男女差はほとんどありません。風の「やってみよう」「あなたらしく」では男性が女性を上回ります。男女差が大きいのが「ありがとう」と「ほっとする」です。いずれも30ポイント近く差があります。女性は人への感謝の気持ち、豊かな人間関係を持ち、生活の安全・安心を確保する気持ちが強いため、しあわせを感じる傾向が強いようです。
47都道府県別 女のしあわせランキング
1位は男女総合と同じく沖縄。京都・高知・神奈川がアップ。東京がダウン。
47 都道府県別の女性のしあわせ風土総合ランキングをみてみましょう。 総合ランキングとは、「風」スコアと「土」スコアを足した値です。女性総合ランキング第1 位は沖縄です。2 位鹿児島との得点差は100ポイント以上と突出しています。続いて3位熊本 、4位宮崎まで男女総合と同順位で九州・沖縄勢の独占です。5位にようやく男女総合7位の兵庫が登場します。また7位に京都(男女総合24位)、8位に高知(同15位)、9位に神奈川(同26位)と男女総合と比べて大幅に順位をあげた3府県が並びます。また、男女総合5位の東京が11位に順位を落としているのも特徴的です。エリア別にみると、ベスト10に6県が入る九州・沖縄に加えて、高知・兵庫・京都・滋賀・石川が700ポイント以上に連なるように、西高東低の傾向がみられます。
47都道府県別 女のしあわせ・男のしあわせ
下の散布図は47都道府県別に女性のしあわせ風土スコアを横軸に、男性のしあわせ風土スコアを縦軸にとったものです。女性のスコアが男性のスコアを上回る都道府県はピンクのゾーンに、男性のスコアが女性のスコアを上回る都道府県はブルーのゾーンに位置します。結果は一目瞭然です。47都道府県中42道府県で女性のスコアが男性のスコアを上回ります。男性が上回るのは、東京、岩手、佐賀、鳥取、茨城の5都県だけです。東北から九州までエリアに偏りはみられません。日本の政治とビジネスの中心である東京が、男性が女性を上回ることも注目すべきことです。また、沖縄の女性のスコアが他地域と比べて突出していることもよくわかります。
女の人生としあわせ
女性の人生としあわせにはどんな関係性があるでしょうか?
まずは年齢としあわせです。これは男女問わずの傾向であり幸福研究の世界で既に定説となっていることですが、人は年をとるごとに幸福感が増すようです。年を重ねるということは、色々な経験を通して自分のしあわせを見つけるということなのです。そう考えると、超高齢社会とは超幸福社会なのかもしれません。また、未婚、既婚で約100ポイントの差がありました。結婚してパートナーができることは、しあわせにつながるようです。子どもの数も面白い結果がみられました。子ども無しより1人、1人より2人、2人より3人がしあわせ、一方4人以上になると3人を下回ります。子どもが多いことはしあわせなものの、現代社会では3人が限界で、4人以上となると経済的な理由などで色々と困難が伴うのかもしれません。
職業別のスコアが興味深い結果です。最も高いのは自営業。専門職、公務員と続きます。この3つは大きな差がありません。そこから40ポイントほど離れて、専業主婦、また少し離れて会社員・役員、パート・アルバイト、大きくはなれて無職という結果です。会社員よりも専業主婦のスコアが高いのです。日本の会社組織は、女性にとってまだまだしあわせな職場環境ではないようです。また、世帯年収は高ければ高いほどスコアは高いという想像どおりの結果です。2号で地域しあわせ風土と雇用や給与額を論じ、地域別にみてみると相関が見られないという分析結果を報告しました。しかし、個人個人でみてみるとやはり経済的豊かさとしあわせには相関があるようです。
産むしあわせ、働くしあわせ
以前から女性の出生率に関して気になっているデータがありました。都道府県別の20-30代女性の就業率と合計特殊出生率に相関があるというデータです。日本の女性の年代別就業率はM字型を描きます。20代女性の就業率は男性とほぼ同じですが、結婚・出産を機にした退職により30-40代の就業率が一旦下がり、その後子育てが落ち着いたタイミングで仕事を再開するため、再度上昇します。欧米先進国と比べて、子育てと仕事を両立できる社会インフラや企業文化が不十分な日本の現状をあらわしています。
下図の右上に位置する島根、福井、鳥取、佐賀、宮崎などの都道府県は女性の就業率と合計出生率が高い、すなわち働きながら産み育てる女性が多い地域です。この背景には、3世代同居などの家族環境(育児・家事を祖父母に任せられる)、地価・物価が安いなどの経済環境(金銭的に多くの子どもを育てられる)、共働きが定着しているという社会文化環境など、いくつかの要因が考えられます。
女性にとって子どもを産み育てること、働くことはしあわせとどんな関係があるのでしょうか?下の図はしあわせ風土・土スコアと出生率の関係をあらわしたものです。相関係数0.545と高い相関が見られました(総合スコア、風スコアとも相関関係は見られ、土スコアとの相関係数が最も高い)。前述した子どもの数別の分析からも明らかなように、女性のしあわせと出産、子どもの有無には関係がありそうです。
働くこととしあわせの関係性はどうでしょう?職業別幸福度は自営業・専門職・公務員・専業主婦・会社員の順であったように、仕事の有無ではなく、その内容や職場環境により幸福度は異なるようです。また、20-30代女性の就業率としあわせ風土スコアには相関は見られませんでした。必ずしも働くことが女性のしあわせにつながるとはいえないようです。
少子化による人口減少を抑制するためには、出生率をあげる必要があります。そのためには女性が出産しやすい環境をつくる必要があります。しあわせ風土スコア、特に土スコアと出生率に相関が見られたように、地域に女性のしあわせを後押しする土壌が豊かであればあるほど、出生率はあがるということです。
地方圏の人口減少の原因の一つに、若い世代、特に女性が東京圏他の都市圏に流出し戻ってこないことがあげられます。女性を地域に留めるために必要なのが雇用・働き口です。会社員のしあわせ風土スコアが専業主婦・自営業・専門職・公務員を下回っていたことが示すように、日本の会社組織は女性にとってしあわせな環境ではないようです。女性が働きやすい環境をつくること、出産しやすい環境をつくること、それが女性自身のしあわせであり、同時に地域のしあわせに違いありません。
女性は地域に何を求めているのか?
女性がしあわせを感じる地域にはどんなインフラ、環境、生活条件が備わっているのでしょうか?男女別に地域しあわせ風土スコアと相関性の高い項目のトップ10をあげてみました。男女ではっきりと違いがあることがわかります。
女性はお祭り・イベント(1位)、地域活動の機会・支援(2位)、商店街・中心市街地(6位)、飲食・買い物店舗(7位)と人が集う場、楽しむ場を求めているようです。男性はランク外の地域の知名度(3位)、国際性(5位)が上位にあがるように、地域外とのつながりや交流、地域のブランド力がしあわせと関連しているようです。 また、小・中・高教育が10位にあがるのも、女性ならではの子育ての視点でしょう。一方、男性のランキングには自治体の情報提供(1位)、防災施設・制度(4位)、環境保護(6位)、高齢者支援(7位)、医療支援(8位)、公務員の対応(9位)が登場するのが特徴的です。女性と比べて日常生活に関連する項目が少なく、自分の将来を危惧し、安全・安心を担保していることがしあわせにつながるようです。